アトピー性皮膚炎

1、アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は角層表皮のバリア障害があり、さまざまな因子による非特異的刺激反応やアレルギー性炎症反応を皮膚に生じる慢性、再発性の皮膚疾患です。小児では、食物、細菌、発汗、環境因子がアレルゲンになることが多く、また、喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎の合併が多く、家族歴があることが多くあります。近年は皮膚のバリア機能をつかさどるフィラグリン遺伝子の異常が、アトピー性皮膚炎と診断されている人の20-50%に認められることも報告されています。

2、バリア機能の破壊

バリア機能障害により、外界からの各種の抗原や刺激の経皮侵入が容易となり、アレルギー反応を引き起こしやすくなります。
また、バリア機能が低下していると、汗、汚れ、乾燥、衣類などの外的刺激も受けやすくなります。この双方の働きにより、アトピー性皮膚炎が悪化する病態が作られます。従って、バリア機能を強くして、皮疹の悪化をきたさないようにすることが必要になってきます。
では、なぜ、バリア機能を強くすることが必要なのでしょうか?
食物アレルギーの中の即時型アレルギー(食べてすぐにじんましんや呼吸困難などの症状がでるもの)の感作は従来は,消化管で食物の抗原が体内に入り、食物アレルギーを獲得するというのが、主な感作経路といわれていましたが、最近では、皮膚のバリア機能が破壊されていると、食物の抗原が皮膚内に入り、アレルギーを獲得してしまうという経皮感作という新たな経路が注目されています。「茶のしずく」石鹸による小麦アレルギーの獲得というニュースが少し前に話題になりました。この石鹸に含まれていた小麦成分のグルパール19Sが、石鹸の界面活性剤によると考えられる皮膚のバリア機能の低下により、アトピー性皮膚炎の既往のない人においても、皮膚から体内に入り、小麦摂取によってじんましん、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーが起こったという例です。経皮感作による食物アレルギーの恐ろしさを再認識しました。そして、スキンケアの重要性、バリア機能回復が注目されるようになったわけです。

3、バリア機能を高めるには

バリア機能を高めるのは並大抵なことではありませんが、可能な限り、努力していかなければいけません。

(1)入浴・洗顔の注意を

熱いお湯やシャワーは皮膚の乾燥を強くします。36℃から40℃が最適な温度です。
石鹸は保湿成分の配合された乾燥肌用の低刺激性のものを使用してください。ボデイシャンプーは界面活性剤が多く、皮膚を乾燥させるものが多いですから、なるべく使用を控えましょう。

(2)保湿

入浴後、洗顔後30分~1時間の間に急速に肌が乾燥していきます。
30分以内に保湿剤を塗布して肌を保護してください。

(3)食生活の改善

食生活の乱れがあったり、栄養状態が十分でないと、皮膚は栄養不足になり弱くなります。
特に、ビタミン、ミネラル、タンパク質不足は皮膚の状態を悪化させます。

(4)湿疹の改善

肌が壊れている湿疹を放置すると、その部分から雑菌や刺激物質、食物抗原が侵入し、さらなるかゆみを引き起こします。適切な外用剤を塗布して、早くバリア機能を回復させましょう。

4、湿疹の治療

(1)外用治療

ステロイド外用剤

ステロイドと聞くと、血管拡張、多毛、皮膚菲薄化など昔の悪いイメージがあり、使用することを少しためらってしまう方もいるのではないでしょうか。しかし、適切に使用することで湿疹を早く治しバリア機能を回復してくれます。
ステロイドの強さ、塗る量、回数や減量方法、保湿の方法、ステロイド減量の仕方など、計画を練りながら、目標を設定して使用していくことが大切です。

タクロリムス軟膏

炎症を抑えて皮膚炎を治してくれる効果のほかに、低下している皮膚のバリア機能を回復させる効果があります。湿疹が改善した後も定期的に使用することで、予防的な治療の有用性が指摘されています。

保湿剤

白色ワセリンを中心とした保湿剤で皮膚をしっかり保護することは、バリア機能を保持するためにも非常に大切なことです。

(2)内服治療

抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤

抗アレルギー薬を服用しておくことで、それらの刺激物質が付着した際にひき起こされるアレルギー反応・かゆみを効果的に抑えてくれます。掻くことでさらにバリア機能を破壊し、さらにかゆくなるという悪循環を引き起こしますので、内服してきちんとかゆみを抑えておくことはとても大切です。

免疫抑制剤

症状が重篤で日常生活に支障のある場合に使用することがあります。16歳以上の成人アトピー性皮膚炎を対象にしています。感染症や腎機能障害に注意して定期的に経過観察することが大切です。

5、生活指導、栄養療法、漢方治療

皮膚、腸管粘膜のバリア機能を高めることが最も大切です。そのためには、バリア機能を高めるための栄養素が最も大切です。タンパク質、鉄、亜鉛などのミネラル、ビタミンB2、B6、Cなどの摂取が少ないと、皮膚や粘膜は弱くなります。また、気道粘膜や腸管粘膜も弱くなりアレルギーを獲得しやすくなります。母乳から栄養を受けている時期は、母親の食事の影響を受けますので、母親の栄養状態がとても大切になります。また、幼児期までは、腸管の粘膜も弱く、十分に栄養素が吸収されていないことが多いと言われています。また、大人でも、不規則な生活で栄養素の吸収が十分でない人が多くなっているように感じます。腸管や皮膚、粘膜を強くする栄養療法、腸を育てる漢方治療はアトピー性皮膚炎の治療にとても有効です。