痒疹は、かゆみを伴うブツブツした丘疹(きゅうしん)や結節ができる皮膚の病気です。赤くはれたブツブツ、盛り上がりのある水っぽいブツブツがみられ、強いかゆみを伴います。虫刺されに伴って生じる痒疹は数日から1週間程度で治ることが多いです。一方、数週間以上、時には数か月、数年にわたって慢性に経過する痒疹もあります。

結節性痒疹の主な特徴
About
- 径5mm~2cm程度の孤立した結節ができる
- 強いかゆみがある
- 腕や脚にできることが多い(体の広範囲にできる場合もある)
- 掻きむしりにより症状がひどくなり、症状が数年にわたって続く場合がある
結節性痒疹は虫刺されやアレルギー、アトピー性皮膚炎などが誘因となって発症する場合と、原因不明で発症する場合があります。どちらの場合も、強いかゆみが伴い、それにより生じた掻きむしり行動が難治性の結節を形成する要因にもつながります。
結節性痒疹の患者さんの年齢分布は、性差は大きくなく、40~50歳代以降で多く発症している傾向が認められます。

もりあがった結節部分では、かゆみを生じる物質(インターロイキン-31、-4、-13などのサイトカインと呼ばれる物質)がたくさん発現しています。これらの物質がかゆみだけではなく、皮膚を硬くもりあがらせる作用にも関わっており、結節が形成されます。
結節性痒疹の治療
Treatment
スキンケア
皮膚を清潔に保ち、刺激を避けるよう皮膚のケアを行います。結節性痒疹の皮疹部では発汗低下があると言われており、保湿剤を多めに外用することで軽快したとの報告があります。結節性痒疹の初期病変に有効ではないかと言われています。
塗り薬
ステロイド外用:最も基本的な治療で、初期の病変から慢性化した病変にも使用します。単純塗布以外にステロイド剤のついたテープ剤の使用も効果があります。
内服薬
抗ヒスタミン剤の内服で痒みを抑えます。内服だけでなかなか痒みがコントロールできない場合もあります。
紫外線照射療法
定期的に照射し、かゆみを抑え、掻破行動が減少することによって病変が軽快してきます。
注射剤:デュピクセント
デュピルマブ(デュピクセント):もともとアトピー性皮膚炎などに使用されていましたが、2023年6月に適応追加となりました。結節性痒疹は「炎症」「かゆみ」が長期間続いた結果、かゆみをともなうぼこぼことした「結節性病変」が生じる疾患ですので、炎症やかゆみをとることで、良い状態を長く維持されます。デュピクセントは、IL-4とIL-13という物質のはたらきを直接おさえることで、「炎症」「かゆみ」をおさえ、「結節性病変」も改善します。

投薬できる方
・成人
・ステロイド外用剤等による治療を施行しても、痒疹結節を主体とする病変が多発し、複数の部位に及ぶ患者に用いること
投与できない方
・デュピクセントに含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こしたことがある方
投与において注意が必要な方
・生ワクチンを接種する予定のある方
・喘息などのアレルギー疾患をお持ちの方
・寄生虫感染のある方
・妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
・高齢の方
投与において注意が診察の流れな方
↓原稿では「3.」が重複しておりましたので、ナンバリングは修正しております
- 初診
初診では注射に適応があるかを診断するため、皮膚の状態を確認します。また、投与できない要件にあてはなるものがないかも確認します - 血液検査
アレルギーの状態の確認のため血液検査を行います。この値は今後 治療効果の判定にも役立ちます。 - 次回初回注射日の予約を取らせていただきます。この日は、アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきますので、最終来院時間が決まっています。ご理解ください。
- 初回注射日
院内で初回の注射を行います。院外で薬剤の処方は受けていただきます。
冷蔵保存してありますので、45分間 常温に戻してから接種することができます。アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきます。次回約2週間後にご来院ください。 - 2週間後 再診時
院内で2回目の注射を行います。院外で薬剤の処方は受けていただきます。アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきます - 2週後に再診
自己注射用の処方箋をお出ししますので、調剤薬局にて注射薬剤を受け取り2週間ごとにご自宅で自己注射していただきます。
デュピクセントは感染症などの副作用が出る恐れがありますので、注射後の状態変化をしっかりと診させていただきたいため、自己注射をご希望される方は、自己注射開始後は、初期のころは、定期的にご来院いただくことをお願いしております。処方日には次の指導料をご負担いただいております。(「在宅自己注射指導管理料」「導入初期加算」処方開始3ヶ月以内)

初回のみ600mg(300㎎ペンまたはシリンジ製剤を2本)、2回目以降は300mg(300㎎ペンまたはシリンジ製剤1本)を2週に1回皮下注射を行います。
※デュピクセント®の自己注射について
自己注射を行う為には、院内で初回(デュピクセント(ペン製剤)のデモ機を使用)・2回目(デュピクセント(ペン製剤)の薬剤を2本、実際に投与)の最低2回は看護師より投与方法に関する指導を受けて頂きます。

注射剤:ミチーガ
ネモリズマブ(ミチーガ):ミチーガは、結節性痒疹のかゆみを誘発するサイトカインであるIL-31に着目した薬です。
IL-31は、Th2細胞から産生されるサイトカインで、末梢神経に発現するIL-31受容体に直接作用することでかゆみを誘発し、末梢神経を表皮付近まで伸ばしてかゆみが増えやすい状態にします。さらにIL-31は各種細胞からサイトカイン、ケモカインの産⽣を誘導することなどにより、かゆみに加え炎症を引き起こし、⽪膚バリア機能の破綻にも関与するとされています。

ミチーガはこのIL-31受容体に結合することでIL-31の結合を阻害し、それに続くIL-31受容体のシグナル伝達を阻害し、IL-31で誘発される結節性痒疹のかゆみを抑制します。通常、成人及び13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として初回に60mgを皮下投与し、以降1回30mgを4週間の間隔で皮下投与します。

投薬できる方
ステロイド外用剤などの炎症をおさえる塗り薬及び抗アレルギー剤を使用した治療を一定期間行っても、十分症状が改善しない、13歳以上の結節性痒疹の患者さんが使用できます。
投与できない方
ミチーガに含まれている成分に対して過敏症を起こしたことがある患者さんは使用できません。
以下の患者さんでは、ミチーガによる
治療を受けることについて注意が必要です
以下に該当する患者さんは主治医にご相談ください。
● 妊娠中、または妊娠している可能性のある患者さん● 授乳中の患者さん
● 長期ステロイド内服療法を受けている患者さん
通常、成人及び13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)
として初回に60mgを皮下投与し、以降1回30mgを4週間の間隔で皮下投与します。

ミチーガで治療中の注意は?
ミチーガで治療を受けている間は、かゆみがおさまっても皮膚の状態がよくなるまでは、ステロイドの外用などをすぐに中止しないこと、保湿などの外用剤の使用は続けてください。
ミチーガの副作用
重篤な過敏症(アナフィラキシー)
ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱 など
※これらの症状がみられた場合には、次の受診日を待たずに、速やかに受診してください。
※これらの副作用は注射直後だけに起こるとは限りません。
感染症
ヘルペス感染症、蜂窩織炎、毛嚢炎などの皮膚の感染症や、上気道炎などの全身の感染症がみられる場合があります。いつもと違う皮膚の症状や、発熱、せき、のどの痛みなどのかぜの症状を感じた場合は、必ず主治医もしくは看護師、薬剤師にご連絡ください。
皮膚症状の悪化
ミチーガ治療中に、アトピー性皮膚炎の悪化や紅斑、じんま疹、湿疹などの皮膚症状の悪化がみられる場合があります。かゆみがおさまっていても、普段とは異なる新たな皮疹が出てきたり、皮疹が悪化した場合は、すぐに受診してください。
注射部位の症状
ミチーガを注射した部位の皮膚に内出血、赤み、はれなどの症状がみられることがあります。このような症状がみられた場合も、主治医もしくは看護師、薬剤師にお申し出ください。
ミチーガの薬剤費
ミチーガ皮下注用30㎎バイアルは1本67,112円で、3割負担の方は20,134円(薬剤費のみ)となります。
日常生活での注意
Point
- 掻いたり、擦ったり、いじったり、触ったりするのは止めるように努めましょう。掻くことで新しい皮疹ができ、古い皮疹は跡が残ります。そのため、皮膚の症状を露出しないようにして、爪を切りましょう。
- かゆみを止める内服薬、外用剤の治療をしっかり行いましょう。
- しっかり保湿してバリア機能を高めましょう。
- 熱いお湯をあてないようにしましょう。
- かゆみの原因(ストレス・発汗・乾燥・ちくちくしたりする衣類)となることを避けましょう。