アトピー性皮膚炎は角層表皮のバリア障害があり、さまざまな因子による非特異的刺激反応やアレルギー性炎症反応が皮膚に生じる慢性、再発性の皮膚疾患です。
アトピー性皮膚炎とは
About
「アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)」は、慢性的に皮膚が炎症を起こし、かゆみや湿疹を繰り返す皮膚疾患です。日本では非常に一般的で、子どもに多いですが、大人になっても続くことがあります。
主な特徴は:
- 強いかゆみ
- 乾燥肌(ドライスキン)
- 赤み、腫れ、湿疹
- 症状の良くなる時期と悪化する時期を繰り返す
- 皮膚のバリア機能の低下
原因は複合的で、次のような要素が関係しています:
- 遺伝的要因(家族にアトピー歴がある)
- 皮膚のバリア機能の低下
- アレルギー(ハウスダスト、ダニ、食べ物など)
- ストレス、気候、生活環境
以上のような特徴がありますが、治療として大切なことは
- かゆみをとる
- 炎症を抑える
- バリア機能を高める
この3本柱の治療がとても大切になってきます。
なかでもバリア機能を高めることはとても大切なことです。
バリア機能障害により、外界からの各種の抗原や刺激の経皮侵入が容易となり、アレルギー反応を引き起こしやすくなります。
また、バリア機能が低下していると、汗、汚れ、乾燥、衣類などの外的刺激も受けやすくなります。この双方の働きにより、アトピー性皮膚炎が悪化する病態が作られます。従って、バリア機能を強くして、皮疹の悪化をきたさないようにすることが必要になってきます。
では、なぜ、バリア機能を強くすることが必要なのでしょうか?食物アレルギーの中の即時型アレルギー(食べてすぐにじんましんや呼吸困難などの症状がでるもの)の感作は従来は,消化管で食物の抗原が体内に入り、食物アレルギーを獲得するというのが、主な感作経路といわれていましたが、最近では、皮膚のバリア機能が破壊されていると、食物の抗原が皮膚内に入り、アレルギーを獲得してしまうという経皮感作という新たな経路が注目されています。「茶のしずく」石鹸による小麦アレルギーの獲得というニュースが少し前に話題になりました。この石鹸に含まれていた小麦成分のグルパール19Sが、石鹸の界面活性剤によると考えられる皮膚のバリア機能の低下により、アトピー性皮膚炎の既往のない人においても、皮膚から体内に入り、小麦摂取によってじんましん、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーが起こったという例です。経皮感作による食物アレルギーの恐ろしさを再認識しました。そして、スキンケアの重要性、バリア機能回復が注目されるようになったわけです。

バリア機能を高めるには
バリア機能を高めるのは並大抵なことではありませんが、可能な限り、努力していかなければいけません。
1. 入浴・洗顔の注意を
熱いお湯やシャワーは皮膚の乾燥を強くします。36℃から40℃が最適な温度です。
石鹸は保湿成分の配合された乾燥肌用の低刺激性のものを使用してください。ボデイシャンプーは界面活性剤が多く、皮膚を乾燥させるものが多いですから、なるべく使用を控えましょう。
2. 保湿
入浴後、洗顔後30分~1時間の間に急速に肌が乾燥していきます。
30分以内に保湿剤を塗布して肌を保護してください。
3. 食生活の改善
食生活の乱れがあったり、栄養状態が十分でないと、皮膚は栄養不足になり弱くなります。
特に、ビタミン、ミネラル、タンパク質不足は皮膚の状態を悪化させます。
4. 湿疹の改善
肌が壊れている湿疹を放置すると、その部分から雑菌や刺激物質、食物抗原が侵入し、さらなるかゆみを引き起こします。適切な外用剤を塗布して、早くバリア機能を回復させましょう。
アトピー性皮膚炎の治療
Treatment
外用治療
- ステロイド外用剤…ステロイドと聞くと、血管拡張、多毛、皮膚菲薄化など昔の悪いイメージがあり、使用することを少しためらってしまう方もいるのではないでしょうか。しかし、適切に使用することで湿疹を早く治しバリア機能を回復してくれます。ステロイドの強さ、塗る量、回数や減量方法、保湿の方法、ステロイド減量の仕方など、計画を練りながら、目標を設定して使用していくことが大切です。
- タクロリムス軟膏…炎症を抑えて皮膚炎を治してくれる効果のほかに、低下している皮膚のバリア機能を回復させる効果があります。湿疹が改善した後も定期的に使用することで、予防的な治療の有用性が指摘されています。
- コレクチム軟膏…コレクチム軟膏とは、デルゴシチニブ(delgocitinib) を有効成分とする外用薬です。デルゴシチニブは、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤の一種です。ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1,JAK2,JAK3およびTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することで、各種サイトカイン刺激により誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞および単球の活性化を抑制してアトピー性皮膚炎の炎症をおさえます。
- モイゼルト軟膏…モイゼルト軟膏とは、ジファミラスト(difamilast) を有効成分とする外用薬です。有効成分のジファミラストは、PDE4(ホスホジエステラーゼ4)阻害薬に分類されます。PDE4と呼ばれる酵素は、cAMPという物質をAMPに分解する役割があります。アトピー性皮膚炎の方は細胞内のcAMPの濃度が低下していることがわかっており、cAMPの量が減ると体の中で炎症を引き起こすサイトカインが過剰につくられ炎症が悪化します。モイゼルト軟膏を外用するとPDE4を阻害しcAMPの分解を抑えることで濃度が低下しなくなります。その結果 炎症性サイトカインの過剰産生が抑えられ炎症をおさえることができます。


- ブイタマークリーム…ブイタマー(一般名:タピナロフ)は、「AhR調整薬」と呼ばれる種類の薬剤です。ブイタマーの有効成分であるタピナロフは、細胞質に存在する特定の受容体(芳香族炭化水素受容体:AhR)を活性化して炎症反応を促進する生体内物質の産生を抑制するほか、皮膚バリア機能関連分子および抗酸化分子の遺伝子発現を誘導して皮膚症状を改善します。
- 保湿剤…白色ワセリン、ヒルドイドクリームを中心とした保湿剤で皮膚をしっかり保護することは、バリア機能を保持するためにも非常に大切なことです。
内服治療
- 抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤…抗アレルギー薬を服用しておくことで、それらの刺激物質が付着した際にひき起こされるアレルギー反応・かゆみを効果的に抑えてくれます。掻くことでさらにバリア機能を破壊し、さらにかゆくなるという悪循環を引き起こしますので、内服してきちんとかゆみを抑えておくことはとても大切です。
- 免疫抑制剤…症状が重篤で日常生活に支障のある場合に使用することがあります。16歳以上の成人アトピー性皮膚炎を対象にしています。感染症や腎機能障害に注意して定期的に経過観察することが大切です。
注射治療「デュピクセント®」
アトピー性皮膚炎は「炎症」「かゆみ」「バリア機能低下」の3つの要素が関係しあい、悪循環を形成します。どれか1つだけではなく、3つすべてに着目し、良い状態を長く維持することが大切です。
デュピクセント®は「IL-4」と「IL-13」という物質のはたらきを直接おさえることで、「炎症」「かゆみ」「バリア機能低下」のすべてに対する効果が期待できます。


投与できる方
- これまでの治療では十分な効果が得られない、生後6か月以上 かつ体重5㎏以上のアトピー性皮膚炎(15歳以上)の方
- ステロイド外用薬・プロトピック軟膏などの抗炎症外用薬を一定期間投与しても十分な効果が得られない方
- 以下の3つの項目を判定して、一定のスコア以上である必要があります。
・IGAスコアが3以上
・全身又は頭頸部のEASIスコアが16以上
・体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)が10%以上 - 月に2回の通院が可能な方
自己注射ができるようになるまでは2週間に1回の注射が必要です
デュピクセントは感染症などの副作用が出る恐れがありますので、注射後の状態変化をしっかりと診させていただきたいため、自己注射開始後は、初期のころは、定期的にご来院いただくことをお願いしております。 - 外用治療も併用できる方
注射のみに頼らず外用もしっかり続けることも治療のために必要です。

小児アトピー性皮膚炎を早期から治療する意義
アトピー性皮膚炎を持つお子さまは、早期に効果の高い治療を受けることで次のような意義があると考えております。
- アレルギーマーチ(乳児期から学童期にかけて、さまざまなアレルギー性疾患が年齢とともに次々に現れていく現象)を抑えることができる。
- アトピー性皮膚炎に伴ううつ・登校拒否を減らせる可能性がある
- ステロイド外用薬の使用量を減らすことができる
- 症状が改善してきたら注射治療をやめられる可能性がある
投与できない方
デュピクセントに含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こしたことがある方
投与において注意が必要な方
・生ワクチンを接種する予定のある方
・喘息などのアレルギー疾患をお持ちの方
・寄生虫感染のある方
・妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
・高齢の方
診察の流れ
- 初診
初診では注射に適応があるかを診断するため、皮膚の状態を確認します。また、投与できない要件にあてはなるものがないかも確認します - 血液検査
アレルギーの状態の確認のため血液検査を行います。この値は今後 治療効果の判定にも役立ちます。 - 結果説明(2週間前後)
適応がある方は、次回初回注射日の予約を取らせていただきます。注射日は、アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきますので、最終来院時間が決まっています。ご理解ください。 - 初回注射日
院内で初回の注射を行います。院外で薬剤の処方は受けていただきます。
冷蔵保存してありますので、45分間 常温に戻してから接種することができます。アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきます。次回約2週間後にご来院ください。 - 2週間後 再診時
院内で2回目の注射を行います。院外で薬剤の処方は受けていただきます。アレルギーがないか、院内で注射後30分確認させていただきます - 2週後に再診
自己注射用の処方箋をお出ししますので、調剤薬局にて注射薬剤を受け取り2週間ごとにご自宅で自己注射していただきます。
デュピクセントは感染症などの副作用が出る恐れがありますので、注射後の状態変化をしっかりと診させていただきたいため、自己注射をご希望される方は、自己注射開始後は、初期のころは、定期的にご来院いただくことをお願いしております。処方日には次の指導料をご負担いただいております。(「在宅自己注射指導管理料」「導入初期加算」処方開始3ヶ月以内)
デュピクセントの用法用量は、適応疾患・年齢・体重によって異なります。

注射部位は、両上腕、腹部、両大腿です。
投与後、気をつけるポイント
発現する可能性のある重篤な副作用とその症状について
過敏症反応
デュピクセント®の投与により、過敏症反応が現れることがあります。
下記の症状がみられたら、投与を中止し速やかに主治医に相談してください。
主な症状
ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱 など
※これらの症状がみられた場合には、次の受診日を待たずに、速やかに受診してください。
※これらの副作用は注射直後だけに起こるとは限りません。
デュピクセント®の治療費
・健康保険は適応しています。その上でこの金額です。
・別途、初診料、再診料、処方せん料、検査料、指導料などがかかります。
デュピクセント®の薬剤日の目安



高額療養費制度の仕組み
1ヵ月(その月の1日~末日)の間に医療機関の窓口で支払うべき額(自己負担額)が、一定の金額を超えることになった場合、自己負担額を一定額(自己負担上限額)にまでおさえることができる制度です。詳しくは加入している保険者などにご確認ください。

「多数回該当」制度の仕組み
継続して高額な医療を受ける必要のある方には、自己負担上限額がさらに引き下げられる制度があります。
直近12ヵ月以内に3回以上高額療養費制度の適用を受けた場合(「多数回該当」といいます)、4回目以降の月の自己負担の上限額がさらに引き下げられます

高額療養費制度の適用を受けるには
マイナンバーカードを健康保険証として使⽤される場合は、医療機関などで⾃動的に自己負担上限額が適⽤されますので、申請を行う必要はありません(ただし、ご加入されている健康保険がデータを登録していない場合には、これまでと同じ扱いとなります)。
<マイナンバーカードの健康保険証利用について>
マイナンバーカードは医療機関・薬局で健康保険証として利用することができ、「マイナ保険証」と呼ばれます。マイナンバーカードをマイナ保険証として利用する際には、事前に「マイナポータル」などからの申請が必要です。
今後、健康保険証はマイナ保険証へ移行し、2024年12月2日から現行の健康保険証は新規発行されなくなります。マイナ保険証の利用登録方法や、お手元の健康保険証の有効期限など、詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
マイナンバーカードを健康保険証として使用されない方は、事前に申請を行うか、支払った後に払い戻し申請を行う必要があります。
デュピクセント®相談室
デュピクセントの操作方法に関するご質問
0120-50-4970
操作方法へのご質問 24時間365日
医療助成制度へのご質問(平日・土 9:00~21:00 日祝日 休み)
注射治療「イブグリース(レブリキズマブ)」
イブグリース皮下注250mg(有効成分:レブリキズマブ)は既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の患者様を対象に、2024年1月17日に承認され2024年5月31日に発売された生物学的製剤です。剤形はオートインジェクター(自動注射器)とシリンジ(注射器)があります。薬液が自動で注入されるか、手動で注入するかという点が異なります。
イブグリースの特徴
・アトピー性皮膚炎の病態形成に中心的な役割を果たすIL-13があります。かゆみを引き起こしたり、 皮膚のバリアを弱めたりする作用があります。
IL-13によって引き起こされたかゆみでかいてしまうと、 皮膚のバリアはいっそう弱まり、外からの刺激に敏感になります。すると、IL-13がさらに作られるという悪循環ができ、アトピー性皮膚炎が悪化・持続すると考えられています。
イブグリースは、IL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体です。IL-13受容体複合体の形成とその後のシグナル伝達を阻害し、IL-13を介したアトピー性皮膚炎の病態形成を抑制します。
- 導入期は初回・2週後に1回500mg、4週以降は1回250mgを2週間隔で投与します。4週(3回目)以降は患者さまの状態に応じて1回250mgを4週間隔で投与する事ができます。

イブグリースの有効性について
イブグリースは病態の中心であるIL-13を選択的に阻害する事でアトピー性皮膚炎の症状を改善します。
イブグリースは消失半減期が約21日と長い事から、投与開始4週以降は状態に応じて4週間隔での投与が認められています。
・導入期は初回・2週後に1回500mg、4週以降は1回250mgを2週間隔で投与します。4週(3回目)以降は患者さまの状態に応じて1回250mgを4週間隔で投与する事ができます。

注射のスケジュールについては、主治医の指示にしたがってください。

適応患者
・(成人)アトピー性皮膚炎の患者さま
・(小児)12歳以上かつ体重40kg以上のアトピー性皮膚炎の患者さま
・従来の治療(※)では十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎患者さま
※ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による治療
イブグリースの副作用について
重篤な過敏症(アナフィラキシー)
ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱 など
※これらの症状がみられた場合には、次の受診日を待たずに、速やかに受診してください。
※これらの副作用は注射直後だけに起こるとは限りません。
体調がおかしいと感じたら、できるだけ早く主治医にご相談ください。
結膜炎
目やまぶたの赤み、腫れ、かゆみ、乾燥などの症状があらわれます。
注射部位反応
注射をした部位に発疹、腫れ、かゆみなどの症状があらわれます。
好酸球増加症
血中の好酸球(白血球の一種)の数が増加することがあります。
結膜炎
目やまぶたの赤み、腫れ、かゆみ、乾燥などの症状があらわれます。
注射部位反応
注射をした部位に発疹、腫れ、かゆみなどの症状があらわれます。
上記のような症状が出たり、体調がおかしいと感じたら、できるだけ早く主治医にご相談ください。
イブグリースの対象患者さまについて
・(成人)アトピー性皮膚炎の患者さま
・(小児)12歳以上かつ体重40kg以上のアトピー性皮膚炎の患者さま
・従来の治療(※)では十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎患者さま
※ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による治療
効能・効果に関連する注意
原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤や保湿外用剤を併用することとされております。
注射治療「ミチーガ」
ミチーガ皮下注用60mgシリンジ(有効成分:ネモリズマブ)は、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした日本初、世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体である生物学的製剤です。


ミチーガの適応
従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬及び抗アレルギー剤を使用して、治療を一定期間行っても、かゆみが改善しない、6歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できます。
ミチーガが使えない人は?
ミチーガに含まれている成分に対して過敏症を起こしたことがある患者さんは使用できません。
ミチーガの治療で注意が必要な人は?
以下に該当する患者さんは主治医にご相談ください。
・妊娠中、または、妊娠している可能性のある患者さん
・授乳中の患者さん
・長期ステロイド内服療法を受けている患者さん
・ワクチンを投与する予定のある方

成人及び13歳以上の小児
ミチーガ60㎎シリンジを使用いたします。
6歳以上13歳未満の小児
ミチーガ30㎎バイアルを使用いたします。
ミチーガで治療中の注意は?
ミチーガで治療を受けている間は、かゆみがおさまっても皮膚の状態がよくなるまでは、ステロイドの外用などをすぐに中止しないこと、保湿剤などの外用剤の使用は続けてください。
ミチーガの副作用
重篤な過敏症(アナフィラキシー)
ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱 など
※これらの症状がみられた場合には、次の受診日を待たずに、速やかに受診してください。
※これらの副作用は注射直後だけに起こるとは限りません
感染症
ヘルペス感染症、蜂窩織炎、毛嚢炎などの皮膚の感染症や、上気道炎などの全身の感染症がみられる場合があります。いつもと違う皮膚の症状や、発熱、せき、のどの痛みなどのかぜの症状を感じた場合は、必ず主治医もしくは看護師、薬剤師にご連絡ください。
皮膚症状の悪化
ミチーガ治療中に、アトピー性皮膚炎の悪化や紅斑、じんま疹、湿疹などの皮膚症状の悪化がみられる場合があります。かゆみがおさまっていても、普段とは異なる新たな皮疹が出てきたり、皮疹が悪化した場合は、すぐに受診してください。
注射部位の症状
ミチーガを注射した部位の皮膚に内出血、赤み、はれなどの症状がみられることがあります。このような症状がみられた場合も、主治医もしくは看護師、薬剤師にお申し出ください。
ミチーガの薬剤費

内服治療「リンヴォック」
リンヴォック錠(ウパダシチニブ)は、1日1回で服用時間の制限がない、アトピー性皮膚炎治療のための飲み薬です。アッヴィ合同会社が製造販売しており関節リウマチ、関節症性乾癬に続く3つ目の適応症として2021年8月25日に追加承認を取得しました。
アトピー性皮膚炎における炎症をコントロールし、服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
リンヴォックの特徴
アトピー性皮膚炎の病因は、JAK1経路を介してシグナルを伝達する炎症誘発性サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-22、TSLP、IL-31及びIFN-γを含む)によって引き起こされます。なんらかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします。リンヴォックは、炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症やかゆみを引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、アトピー性皮膚炎の症状に関与する複数のサイトカインの働きを抑えることで、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。

適応患者
ステロイド外用剤・プロトピック軟膏などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。
※原則として、リンヴォック投与開始後も状態に応じて抗炎症外用薬・保湿外用薬を併用していただきます。
通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては、倍量の30mgが処方される場合もあります。
リンヴォックの薬価(薬剤の価格)
リンヴォックの剤型別の薬価は以下の通りです。※2024年4月時点の情報に基づいています。


安全性*
重大な副作用
重篤な感染症、消化管穿孔、肝機能障害、間質性肺炎、重篤な過敏症などが報告されています。
特に注意すべき副作用
上気道感染や気管支炎、悪心、腹痛、咳、毛包炎、ざ瘡、頭痛、発熱、疲労感
リンヴォックが服用できない方
・リンヴォックの成分に対して過敏症の既往歴がある場合(重篤なアレルギー症状があらわれるおそれがあります。)
・重篤な感染症(敗血症など)に罹患している場合(症状が悪化するおそれがあります。)
・活動性結核に罹患している場合(症状が悪化するおそれがあります。)
・重度の肝機能障害がある場合
・好中球数が1,000/mm3未満の場合
・リンパ球数が500/mm3未満の場合
・ヘモグロビン値が8g/dL未満の場合
・妊娠中の方または妊娠している可能性のある方(動物に高用量を投与した試験および類薬の投与で、催奇形性が認められています。)
光線療法
アレルギー薬などの飲み薬や、ステロイド外用薬などの塗り薬を使用してもなかなか治らない。それでもかゆみや赤みがツライ方に、病変部に紫外線を繰り返し照射することで症状を改善していく治療です。痛みなどもほぼなく多くの方に効果を実感していただいています。
当院で使用しているのはアブソルート社製の「エキシプレックス308」です。
アレルギー検査
アトピー性皮膚炎・花粉症・蕁麻疹などのアレルギーによる皮膚疾患はアレルゲンとの接触を避けることがとても重要です。アレルゲンを特定するために「VIEW39」というアレルギー検査がおすすめです。
39個のアレルギー物質への反応を一度に調べることができます。
※VIEW39ではない代表的なアレルギー検査は13項目までしか保険適用になりません。
日常生活での注意
Point
生活指導、栄養療法、漢方治療
皮膚、腸管粘膜のバリア機能を高めることが最も大切です。そのためには、バリア機能を高めるための栄養素が最も大切です。タンパク質、鉄、亜鉛などのミネラル、ビタミンB2、B6、Cなどの摂取が少ないと、皮膚や粘膜は弱くなります。また、気道粘膜や腸管粘膜も弱くなりアレルギーを獲得しやすくなります。母乳から栄養を受けている時期は、母親の食事の影響を受けますので、母親の栄養状態がとても大切になります。また、幼児期までは、腸管の粘膜も弱く、十分に栄養素が吸収されていないことが多いと言われています。また、大人でも、不規則な生活で栄養素の吸収が十分でない人が多くなっているように感じます。腸管や皮膚、粘膜を強くする栄養療法、腸を育てる漢方治療はアトピー性皮膚炎の治療にとても有効です。