アレルゲン免疫療法は、100年以上も前から行われている治療法です。主には、アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が行われていますが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。

「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。舌下免疫療法は、アレルギー検査の結果でスギまたはダニが陽性(クラス2以上)であれば適応となります。5歳以上で、さらに薬を舌の下に1分ほど置くことができれば治療が可能です。

治療期間

治療期間が、3~5年と長期にわたりますが、治療を継続していただくことで、アレルギー症状を緩和もしくは症状を完全に抑えることができます。症状がある日もない日も続けることが重要で、少なくとも3年間は継続する必要があります。効果がある場合は合計3~5年間治療を続けることを推奨しています。その間も、月1回の通院が必要であり根気のいる治療法です。

治療効果

症状がほとんどなくなる方が20%程度、完治とまではいかなくとも症状が楽になる方が半分程度です。
1年継続して効果が認められない場合は、中断するか相談します。
数年以上治療して効果があれば、治療を終了しても効果が続くと考えられています。効果が減弱してきた場合には治療を再開することも可能です。

問診・診察・検査によりアレルギーを調べます。検査は採血によるアレルギー検査(RAST)で行い、検査の結果でスギまたはダニが陽性(クラス2以上)であれば舌下免疫療法適応となります。

STEP
1

ダニ(ハウスダスト)アレルギーの舌下免疫療法は一年中いつでもスタート可能ですが、スギ花粉アレルギーの舌下免疫療法は花粉が飛んでいない時期(6月から12月)にスタートします。

STEP
2

初回は院内で医師の指導のもと薬を服用します。
その後アレルギー症状が起きないか院内で30分間経過をみます。

STEP
3

2日目からは自宅で内服します。2週目以降は維持量へ増量して毎日飲み続けていただきます。ご不安なことがあれば、いつでもお尋ねください。

STEP
4

薬に対するアレルギー反応は初めの1ヶ月に生じやすいため、2回目は1週間後に、3回目以降は約1ヵ月に一度の診察が必要です。治療期間は3~5年が推奨されています。

STEP
5

舌下免疫療法には以下の種類があります。どちらも舌下錠で常温保存が可能です。

シダキュア(スギ花粉舌下錠)

スギ花粉を原料とするエキスから作られた薬です。少量から服用することによって体を慣らし、スギ花粉によるアレルギー症状を和らげます。

シダキュアは、1日1回1錠を内服します。
錠剤を舌下に置き、1分間保持したあと唾液と一緒に飲み込みます。その後、5分間はうがいや飲食、歯磨きなどは控えてください。錠剤をすぐに飲み込んでしまったり5分間待たずに飲食したりすると、体内にアレルゲンがうまく取り込まれないため、十分な治療効果が期待できないため必ず指示通りに服用しましょう。

ミティキュア・アテシア(ダニ舌下錠)

ダニを原料とするエキスから作られた薬です。量から服用することによって体を慣らし、ダニによるアレルギー症状を和らげます。

ミティキュア・アテシアは、1日1回1錠を内服します。
錠剤を舌下に置き、1分間保持したあと唾液と一緒に飲み込みます。その後、5分間はうがいや飲食、歯磨きなどは控えてください。錠剤をすぐに飲み込んでしまったり5分間待たずに飲食したりすると、体内にアレルゲンがうまく取り込まれないため、十分な治療効果が期待できないため必ず指示通りに服用しましょう。

舌下免疫療法では副作用が生じる場合があります。特にアレルギー反応が強い方は副作用が出やすい傾向にあります。多くの場合は軽症であり抗アレルギー剤の併用で症状が治まりますが、重大な副作用としてアナフィラキシーの報告もあります。

主な副作用

口の中の浮腫、腫れ、かゆみ、不快感、異常感、唇の腫れ、喉の違和感、不快感、耳のかゆみなど

重大な副作用

アナフィラキシー:薬に対する急性の過敏反応により薬を服用後30分以内に発現することが多く、下記の症状が現れます。

早期の症状
皮膚:蕁麻疹、掻痒感、皮膚の発赤などが全身に現れる。
消化器:吐き気、嘔吐
眼:視覚異常、視野の狭窄
呼吸器:呼吸困難、喘鳴、喉の掻痒感、咳
循環器:血圧低下、不整脈
神経:意識混濁、不安、恐怖感

特に緊急度が高い症状は、循環器、神経、呼吸器、消化器の症状です。急激に悪化することもあるため、救急車を呼ぶなどの迅速な対応が必要です。

  • 重い心臓病、自己免疫疾患、免疫不全、慢性感染症の方
  • 薬でコントロールされていない気管支喘息、コントロール不良な気管支喘息の方
  • 癌の治療中または経過観察の方
  • 高血圧治療薬の中でβ遮断薬を服用している方
  • ステロイド薬を内服中の方
  • 抗精神病薬を内服中の方
  • 5歳未満の方、舌の下に薬を保持できない方
  • 近いうちに妊娠を希望されている方、妊娠中、授乳中の方

治療は保険適応です。保険が3割負担の方で、医院での治療費と薬局の薬代で1ヵ月2,500~3,000円程度です。治療開始前のアレルギー検査では、初診料+検査代+処方箋料で7,000円程度かかります。

舌下免疫療法のみで症状が落ち着かない場合は、対症的に症状を抑える薬が必要となり、薬代も追加される場合もあります。

どんなアレルギーにも効果がありますか?

現在のところスギ花粉とダニの2種類のみとなっております。

時々飲み忘れてしまうのですが

飲み忘れがあった時は、飲み忘れた期間などにより対応策が変わってきますので、クリニックにご相談ください。

花粉症がひどいので検査なしで舌下免疫療法を受けられますか?

採血のアレルギー検査で確定診断がついていなければ、自覚症状だけでは舌下免疫療法の治療はできません。

歯の治療や口内炎などがある場合も、治療を続けて大丈夫ですか?

受診してご相談ください。歯の治療の場合は歯科医に傷の治り具合の確認が必要な場合もございます。

舌下免疫療法|うえだ皮膚科内科八田院|名古屋市中川区