「脱毛症」は、正常な毛の生えかわりと比べて多い量の毛が抜ける状態のことを指す言葉です。一般的に問題となるのは頭髪の脱毛症ですが、眉毛や睫毛、髭、体毛など身体の全ての毛に脱毛症が生じる可能性があります。
「脱毛症」は一つの病気を指す言葉ではありません。毛をつくり出す毛包や毛が何らかの理由で壊されたもの、あるいは毛の生えかわりの周期(毛周期)が乱れて抜け毛が多くなってしまうもの の二つに大きく分けることができます。
代表的な脱毛症である円形脱毛症では、病原体などから私たちのからだを守るはずの「免疫」が間違って毛をつくる毛包を壊してしまうことが原因で毛が抜けます。また、男性型脱毛症では男性ホルモンの影響で毛の生えかわりが加速し抜け毛がふえ、毛が小さく目立たなくなり薄毛となります。その他、細菌・真菌(かび)などの感染や内科的な病気(甲状腺疾患、膠原病など)、薬剤や放射線治療の副作用によっても脱毛症となりですが、眉毛やまつ毛、髪、髭、体毛など身体の全ての毛に脱毛症が生じる可能性があります。
脱毛症の種類
Type
円形脱毛症
何らかのきっかけによって本来、細菌やウイルスなどの病原体を壊そうとする働き(免疫)が自分自身の身体に向いてしまい機能が損なわれる病気を自己免疫疾患と呼びます。円形脱毛症は毛を作る毛包周囲に炎症が起き、一部のリンパ球が毛包の組織を壊そうとする自己免疫反応が起きておりその影響で毛が抜けてしまう病気です。
脱毛症状は頭部に1個、円状にでることもあれば、頭部に多発したり、眉毛や睫毛、髭のみ、体毛のみに生じるなど、身体のどの部分にも起きる可能性があります。さらに、症状が重い場合には、頭全体、あるいは全身の全ての毛が抜け落ちる場合もあります。医学的には、頭部に一つだけの円形の脱毛がある場合には単発性通常型(単発型)、多発する場合には多発性通常型(多発型)、頭全体が脱毛した場合には全頭型、全身に脱毛が及ぶ場合には汎発型、また稀ではありますが、頭髪の生え際が帯状に脱毛する場合を蛇行型といって区別しています。全頭型、汎発型、蛇行型は通常型と比較して治りにくい傾向があります。
円形脱毛症の症状が出るのは一生に一度だけのこともあれば何度も再発する場合もあります。兄弟姉妹、親子で発症することも珍しくありません。つまり円形脱毛症を発症しやすい遺伝的な体質を持っている場合があります。アトピーの素因、甲状腺の病気や膠原病との関連もいわれています。一番代表的なものです。病原体などから私たちのからだを守るはずの「免疫」が間違って毛をつくる毛包を壊してしまうことが原因で毛が抜けます。円形脱毛症に合併する病気がないひとでは80%以上で1年以内に治るといわれていますが、再発することもあります。また、脱毛の範囲が広いひとほど治りにくく、全部の毛が抜けてしまった場合、治る確率は10%以下と低い確率です。
円形脱毛症の原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、自己免疫性疾患といって、脱毛部分で自身の免疫機能が異常な働きをしていると考えられています。自身のもつ体質、遺伝子がある上で、疲れやストレス、感染症などが引き金になって円形脱毛症になるといわれていますが、原因不明の人も多いです。また、家系に円形脱毛症を発症している人がいるほど発症しやすく、また、アトピー性皮膚炎のひとほどなりやすいことが報告されています。そのほか、橋本病などの甲状腺疾患や尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などと合併することもいわれており、円形脱毛症をみたときに合併症がないかの確認をする必要があります。
円形脱毛症の治療
はっきりとした原因はわかっていませんが、自己免疫性疾患といって、脱毛部分で自身の免疫機能が異常な働きをしていると考えられています。自身のもつ体質、遺伝子がある上で、疲れやストレス、感染症などが引き金になって円形脱毛症になるといわれていますが、原因不明の人も多いです。また、家系に円形脱毛症を発症している人がいるほど発症しやすく、また、アトピー性皮膚炎のひとほどなりやすいことが報告されています。そのほか、橋本病などの甲状腺疾患や尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などと合併することもいわれており、円形脱毛症をみたときに合併症がないかの確認をする必要があります。
円形脱毛症の治療:外用治療
ステロイド療法
脱毛部位に副腎皮質ステロイドを直接注射する治療法や、ステロイド外用薬を使用する治療法
塩化カルプロニウム
発毛効果の検証が不十分とされていますが、国内で豊富な診療実績があり、血流をよくする育毛剤として発毛効果が認められています。市販の育毛薬にも含まれています。副作用として、発汗、かゆみ、炎症などが起こるおそれがあります。
ミノキシジル
海外で多くの診療実績を持つ薬です。発毛効果が認められており、血管を拡張する効果があります。副作用として、血圧低下、かゆみ、発疹、かぶれなどが起こるおそれがあります。 ※保険適応外です。
円形脱毛症の治療:内服治療(オルミエント)
円形脱毛症の発症に関与するサイトカインの働きを抑えるお薬です。オルミネントは2022年に15歳以上の円形脱毛症に対して保険適応が認められました。 ただし、頭部全体の50%以上の広範囲で脱毛がある方で、過去6か月間、脱毛の改善がなかった方のみ使用が可能です。
オルミエントの作用機序
オルミエントは、JAK(ジャック)阻害薬と呼ばれる飲み薬で、炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症を引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、円形脱毛症の症状に関与する複数のサイトカインの働きを抑えることで、皮膚の炎症を抑えます。

適応患者
頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与すること
用法・用量
通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
用法・用量に対する注意
プロベネシドとの併用時には本剤2㎎1日1回に減量するなど用量に注意すること
中等症の腎機能障害のある患者には2mgを1日1回経口投与する。
本剤による治療反応は、通常投与開始から36週までには得られるので、36週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮すること。
オルミエントの副作用
症状に気づいたら服用をやめ、すぐに主治医、看護師または薬剤師に相談してください。

その他にも以下のような症状が現れる場合もあります。同様に症状に気づいたら、主治医、看護師や薬剤師に相談してください。

特に注意すべき副作用
感染症:オルミエントの服用中は免疫の働きが低下し、感染症にかかりやすくなる可能性があります。また、感染症にかかったときにみられる発熱や体のだるさなどの症状が現れにくくなるかもしれません。
帯状疱疹:帯状疱疹は、痛みを伴う赤い発疹(ぶつぶつ)や水ぶくれを主な症状とする病気です。最初に数日~1週間程度、皮膚の内側からチクチク・ピリピリした痛み注1)が続いた後、同じ場所に発疹が現れます。症状が進行すると、多くは体の左右どちらか片側に発疹が帯状に広がっていき、やがて発疹は水ぶくれへと変化していきます。症状に気づいたら、すぐに主治医、看護師または薬剤師にご相談ください。
静脈血栓塞栓症:静脈血栓塞栓症とは、主に足の静脈に血栓(血の塊)ができること。またその血栓が血流にのって肺の動脈を詰まらせる状態になることです。
間質性肺炎:間質性肺炎とは、肺の中で酸素を取り込む肺胞の壁やその周辺に炎症が起きて、酸素がうまく取り込めなくなる状態です。
消化管穿孔:消化管穿孔とは、何らかの原因により胃や腸に穴があいてしまった状態です。
消化管穿孔に至る前に、胃の痛みなどの症状があらわれることがあります。憩室炎(大腸の一部が袋状に突出し、炎症を起こした状態)を指摘されたことがある場合は、消化管穿孔を起こしやすいと考えられていますので、必ず主治医にお伝えください。
横紋筋融解症・ミオパチー:臨床試験において、筋肉の障害がみられた例が報告されています。
心筋梗塞・脳卒中:臨床試験において、心筋梗塞や脳卒中がみられた例が報告されています。
悪性腫瘍:オルミエントとの因果関係は明らかではありませんが、臨床試験において、悪性腫瘍がみられた例が報告されています。
オルミエントの薬剤費

紫外線療法
アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などにも行われる治療法で、紫外線によって免疫反応を抑えます。当院ではエキシプレックス(保険適用機器)を使用しています。副作用としては、肌の炎症やかゆみ、色素沈着が生じることがあります。
機械性脱毛
同じ位置で強く髪を引っ張って結ぶなど器械的な力が強く加わって抜ける病態です。
脂漏性湿疹による脱毛
適度な皮脂は髪や頭皮に適度な潤いを与えたり、頭皮や毛穴を保護してくれる役割を持ちますが、多すぎると皮脂と汗が混ざり合って毛穴を塞ぎ、新しくできた皮脂が毛穴の内側にたまり、髪が抜けやすい状態になります。
抜毛症(トリコチロマニア)
正常な髪を自分で引っ張って抜いてしまう病気です。精神的不安などのストレスからくる一種の癖で、子供や女性に多く見られます。
薬剤性脱毛
抗がん剤などの薬剤の副作用で毛が抜けてしまう病気です。
その他の疾患による脱毛症
細菌・真菌(カビ)などの感染や内科的な病気(甲状腺疾患、膠原病など)、薬剤や放射線治療の副作用によっても脱毛症となります。
その他の原因による脱毛症
頭皮の不衛生
皮脂や汗により毛穴を塞ぎ、新しくできた皮脂が毛穴の内側にたまり、髪が抜けやすい状態になります。適度な洗髪で髪や頭皮を清潔に保ちましょう。
ストレス
ストレスが自立神経やホルモンのバランスを乱し、血流が悪化し、毛根に栄養分を十分に運べなくなり、髪に栄養が行き渡らなくなり、抜け毛の原因になります。
過度なダイエット
偏った食事や睡眠不足、喫煙など血流の悪くなるような生活習慣も、髪に栄養が行き渡らなくなり、薄毛が進行します。
男性型脱毛症(AGA)
男性型脱毛症(AGA エージーエー)とは、Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」の意味です。成人男性によくみられる髪が薄くなる状態のことで、思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が、どちらか一方、または双方から薄くなっていきます。一般的に遺伝や男性ホルモンの影響などが主な原因と考えられています。
髪の毛1本1本には寿命があります。伸びては抜け、また新しく生えることをくりかえしています。毛包は、「成長期」「退行期」「休止期」のいずれかの状態にあり、このうち成長期が一番長く通常2~6年続きます。しかしAGAの人は成長期が短くなるため、髪の毛が十分に成長しません。よって、髪の毛が十分に育たないうちに抜けてしまします。AGAの人は全国で約1,260万人と多く、20~69歳成人男性4200万人の約3人に1人は何らかの症状が認められています。進行性ですので何もせずに放っておくと髪の毛の数は減り続け、徐々に薄くなっていきます。そのため早めのケアが大切です。
治療
女性型脱毛症(FPHL)
女性型脱毛症(FPHL)とは、女性に発症する薄毛の総称で、頭髪全体が細く薄くなるのが特徴です。男性型脱毛症(AGA)とは異なり、部分的に脱毛が進むのではなく全体的に薄くなるのが特徴です。症状は、頭頂部を中心に比較的広い範囲にハリとコシが失われた細く柔らかい髪の毛が多く生えます。女性型脱毛症は、進行がゆっくりなため、初期症状が見過ごされやすいという特徴があります。また、抜け毛をおこす全身疾患が隠れていることもあり、検査が必要になることも多くあります。女性ホルモンのエストロゲンは髪の成長をつかさどるホルモンです。このエストロゲンが体内から減少することで薄毛、抜け毛が進行します。また、女性ホルモンが減少することで、男性ホルモンが優位になり、より薄毛、抜け毛が進行します。
原因
加齢やホルモンバランスの変化、ストレス、睡眠不足、偏った食生活、過度なダイエットなど
治療
当院では様々な脱毛症の治療をおこなっております。一度ご相談ください。