外傷とは、外力によって受けた組織または臓器の損傷の総称です。皮膚科で診る機会の多い外傷として、棘刺創(きょくしそう)、擦過傷(さっかしょう)、挫滅創(ざめつそう)、切創(せっそう)があります。これらについての症状や、一般的な治療方法を説明します。
外傷の種類
Type
棘刺創(きょくしそう)
尖った異物、いわゆる棘(トゲ)が皮膚に刺さった病変です。原因物質として木の枝、草、畳のいぐさ、魚の骨、ガラスの破片、鉛筆の芯などがあります。痛みを伴い、ときには局所が化膿することがあり、発生部位は手、足、顔面に多くみられます。
治療方法
- 皮表に一部が出ている場合は、拡大鏡で見ながらピンセットで引き抜きます。
- 皮内に埋入している場合は、直径2~3mmの筒状のもの(トレパン)で皮膚をくり抜いて除去します。局所麻酔した上で行いますので、痛みはありません。
- 化膿している場合は異物を除去した後、抗生物質を2~3日間服用していただきます。
擦過傷(さっかしょう)
道路のアスファルトや塀などにこすりつけることにより、皮膚が擦り剥けた創傷です。多くは顔面や四肢に生じます。皮膚損傷は浅く、多くの場合縫合せずに治ります。しかし、創面に微細な土砂、ゴミなどがはり、治ったあとも皮膚の中に残ってしまう場合があります。この状態を「外傷性の刺青」と言いますが、これを防ぐためには受傷後早期に創部の十分な洗浄を行ない、細かな異物を除去しておくことが大切です。すりキズは初期治療が重要となります。
治療方法
- 生理食塩水で創部を洗浄した後、抗生物質軟膏などを塗布します。
挫滅創(ざめつそう)
机や階段の角に強くぶつかるなどによって生じた皮膚の損傷であり、切創に比べて創部周囲の損傷が高度なことが特徴です。損傷の程度により、治癒に時間がかかることがあり、時に傷んだ組織を切除して縫合する場合もあります。また、創部の汚染を伴っていることも多く、その場合はその後の傷の治りにも影響するため、初期治療時に抗生剤の内服や十分な洗浄を行なう必要があります。
損傷が皮膚のみならず皮下組織に拡大している挫滅創に至っては早期に形成外科での治療を受けましょう。
治療方法
- 皮膚の裂け目が小さい場合は、軟膏処置で治癒する場合もあります。
- 裂け目が大きく開いている場合は、傷んだ組織を切除して縫合します。
切創(せっそう)
ガラス片やナイフや包丁など刃物など鋭利なもので切れたいわゆる切りキズです。
手足の切創においては、比較的浅い層を走行する神経、血管、腱などの損傷を伴いやすく、早期にそれらの損傷の有無を確認し、適切な処置を受ける必要があります。
また顔面の切創においても、顔面神経、涙小管、耳下腺管などの損傷を伴う場合があり、専門治療が必要となる場合があります。また、「包丁やスライサーで切ってしまった」など出血が多い場合には、止血を目的とした縫合処置が必要になります。切創の場合、一般的に周囲組織の損傷は軽度であり、縫合処置等により早期治癒が期待できます。
治療方法
- 傷が浅い場合は皮膚をテ-プで寄せるのみで良いです。
- 傷が深い場合には、局所麻酔を行って縫合します。